フィリピンパブとあたたかいお風呂

出張からの帰宅の前日、彼氏が酔って電話してきた内容は


先輩とキャバクラに行ってきた、これから一人でフィリピンパブに行く


だった。

報告されて苦笑いしながら電話を切りすぐ嘔吐した。それからメールで責めて、電話で責めたら逆ギレされた。

飲み屋にでも風俗にでも浮気でもなんでもしたら良い、私にバレない形でなら。



彼は酔って、そして私に甘えてしまってるから報告したんだと思う。


お店の女の子たちや店長に

「彼は子供ではなちゃんに甘えてるんだよ」

と言われた。お母さんには

「はなは相手がぐうの音も出せず逃げ道もなくなるだけ正論で詰めるから逆ギレされちゃう。はなが間違ってるとは言わない、彼が悪い、でも少し逃げ道も与える必要がある」

と言った。

精神科医は相変わらず笑った。

「わざわざ言わなくても良かったのにね」と。




私は報告され逆ギレされ一方的に会話を終わらせられたあと、店長に「死にたい、でも死にたくない、失敗したら連絡します」とLINEをしてから湯船にお湯をはり包丁を研いだ。

お風呂の準備が出来るまでに、お薬をたくさん飲んで根性焼きをたくさんした。

そして服を着たままあたたかいお風呂にはいり、まずはアームカットをした。深く、深く、今までのうっすらなんて切り方はしなかった。

包丁を強めに首にあてて、テレビでみたようにズズッと刃をひいた。

けれど、腕を切るより血は出ない。

テレビでみたように血が吹き出ることはなかった。

強く強くあててひいてひいて、それでもダメだった。大きな血管はきっと奥の方にあるんだろうな。


包丁を首に尽きたてる勇気はなかった。あわよくば死ねれば良いと言う薄っぺらい動機だけではダメなのはずっと前から知っていたのにね。


気がついたら冷めた湯の中で目が覚めた。


朝になっていた。


店長から連絡があり、気持ちをぶちまけた。

そして、その日に出勤した。